センセイ、私最近ハマっているものがあるんです
なに唐突に・・・何にハマってるの?
ズバリ!チーズです!!
おっ、それはいいね。うちの研究室でもチーズを研究しているよ
すごい!ぜひチーズについて色々教えて下さい。沢山、種類があってよく分からなくて・・・
では、今日はチーズの基礎知識についてお話しますね
チーズの様々な分類
細かく分類すると世界には1,000種類以上のチーズがあると言われています。まず、チーズはナチュラルチーズとプロセスチーズに分けられます。
プロセスチーズ
プロセスチーズはナチュラルチーズを一度加熱して溶かして、再形成することで作られます。材料としてはゴーダチーズやチェダーチーズがよく使われます。これにより、均質な味を作ることができますが、加熱して菌を殺しているためそれ以上、熟成することはありません。スライスチーズや6Pチーズなどがこれに当たります。
ナチュラルチーズ
ナチュラルチーズは簡単に言うと、生乳を乳酸菌や凝乳酵素(レンネットに含まれるキモシンという酵素)で凝固した後、ホエイ(乳清)を取り除き、固めたものです。様々な作り方があり、使用する菌や熟成の有無、熟成期間も様々です。菌が生きているため、時間が経つと熟成していきますが、カビ系チーズなど種類によっては食べづらくなるものもあります。基本的に乳酸菌がメインですが、プラスしてプロピオン酸菌、リネンス菌、カビなどをスターター菌として使用します。中にはミモレットのような粉ダニを使って熟成させるチーズやカース・マルツゥのようなウジ虫で熟成させるちょっと危険なチーズもあります。
ナチュラルチーズは熟成タイプと非熟成タイプに分類されます。また、軟質/半硬質/硬質/超硬質と硬さで分類する場合もあります。今では以下の7つの分類が日本では広く受け入れられています。
ナチュラルチーズの7つの分類
今、一般的になりつつある7つの分類を紹介します。代表的なチーズを3つずつ挙げました。
1.フレッシュタイプ
代表的なチーズ:モッツァレラ、カッテージ、クリーム
フレッシュタイプは非熟成チーズで旨味はあまりなく淡白な味わいが特徴です。サラダやピザ、パスタなどに使われることが多いチーズです。
2.白カビタイプ
代表的なチーズ:カマンベール、ブリー、サン・タンドレ
白カビタイプはPenicillium camemberti(ペニシリウム・カマンベルティ)などの白カビを表面に生やして作るソフトチーズです。カマンベールチーズが有名で、そのまま食べても美味しいですが、ケーキなどにもよく使われていますね。初めて食べる人はもしかしたら苦手と感じるかもしれませんが、慣れてくるとむしろ食べやすく大変美味しいチーズです。私もおやつ代わりに食べたりしています。
3.ウォッシュタイプ
代表的なチーズ:リヴァロ、ラミ・デュ・シャンベルタン、エポワス
ウォッシュタイプは日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、塩水や地酒で表面の雑菌を洗いながら作るチーズで、匂いが強く独特の風味があるチーズです。現在ではBrevibacterium linens(リネンス菌)という菌を添加して作られることも多くなっています。その土地で作られる地酒で表面を洗って作るというのが特徴です。何故そのようなことをするかと言うと、簡単に言うとアルコール殺菌です。ワイン、ビール、ブランデーなどで表皮を洗い、リネンス菌の生育をコントロールします(塩水なども使われます)。リネンス菌は納豆菌の仲間で放っておくと臭くなるからです。いずれにしても癖が強いので初心者向けではありません。通が楽しむチーズと言えるでしょう。
4.シェーブルタイプ
代表的なチーズ:ヴァランセ、クロタン・ド・シャヴィニョル、サントゥ・モール
シェーブルはフランス語で山羊という意味で、シェーブルタイプのチーズはその名の通り山羊乳を使ったチーズです。基本的にソフトチーズが多いですが、非熟成のものから熟成したものまでさまざまな種類があります。中には独特の獣臭がするものまであります(全くしないものもあります)。この臭いは、山羊を育てている環境や搾乳する際の衛生環境などによって変わってきます。通はこの臭いが大好きのようです(私は苦手です・・・)。ウォッシュタイプとシェーブルタイプは通におすすめのチーズと言えるでしょう。
5.青カビタイプ
代表的なチーズ:ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトン
青カビタイプのチーズはPenicillium roqueforti(ペニシリウム・ロックフォルティ)などの青カビを使ったチーズですが、白カビタイプと違い、カビは内部に増殖するのが特徴です。先に挙げたロックフォール(フランス)、ゴルゴンゾーラ(イタリア)、スティルトン(イギリス)は世界三大ブルーチーズと呼ばれています。サラダなどに活用されています。私はイタリアに行った時よく分からず、無限ゴルゴンゾーラ(ゴルゴンゾーラがストップというまで何度も無限に出てくる)サラダを注文して、嫌というほど食べた記憶があります。こちらも癖があるチーズですので好き嫌いがあるかもしれません。
機能面でいうとかなり優れたチーズですが、塩分の摂りすぎには注意が必要です。
6.セミハードタイプ
代表的なチーズ:ゴーダ、マリボー、サムソー
セミハードタイプのチーズは日本人に一番馴染みのあるプロセスチーズに似た食べやすいチーズです。先に述べたようにプロセスチーズにはゴーダ(オランダのチーズ)がベースになっていることが多いので、非常に食べやすいのが特徴です。チーズを作る際にプレスしてホエイを排除し、水分を38~46%に減らして作るのが特徴です。中には5年熟成のものなどもあり、プロセスチーズとは旨味やコクが全く異なりますので是非味わってみてください(感動するぐらい濃厚な味で通常のものとはかなり異なります)。
7.ハードタイプ
代表的なチーズ:チェダー、エメンタール、パルミジャーノ・レッジャーノ
ハードタイプはセミハードよりも水分が少なく長期間熟成させるものが多いですが、違いは加熱の有無です。ハードタイプのチーズは45℃以上に加熱して圧搾します。これにより水分含量がさらに少なくなりますが、水分含量は熟成期間等によっても変わってくるため、加熱の有無が分類の違いになっています。そのためセミハードを非加熱圧搾タイプ、ハードを加熱圧搾タイプと呼ぶ場合もあります。また、ハードタイプチーズは大きく作るものが多く、中には100 kg以上のものもあります。
エメンタールチーズはトムとジェリーに出てくる穴の空いたチーズです。この穴はチーズアイと呼ばれます。これはプロピオン酸菌が関わっており、発酵・熟成中に出てくる炭酸ガスによりチーズに穴が空きます。また、エメンタールチーズは、チーズフォンデュなどにもよく使われる食べやすいチーズです。パルミジャーノ・レッジャーノは、粉チーズとしてパスタやラタトゥイユなどにかけて食べているチーズです。
チーズの機能性
チーズには様々な機能性が知られています。ここでは簡単に述べていきます。
虫歯予防効果
硬質チーズには虫歯予防効果があることWHO(世界保健機構)も認めています。チーズ中のリン酸カルシウムが歯の再石灰化を促したり、よく噛むことで口腔内のpHが上昇するためであると推定されています。
様々な機能性ペプチド
チーズ中には降圧ペプチド(血圧降下)、抗酸化ペプチド、カルシウム吸収促進ペプチド、DPP-Ⅳ阻害ペプチド(インスリン分解の抑制)、オピオイドペプチド(鎮痛作用)など、様々な機能性ペプチドが含まれています。また、最近、カマンベールチーズが認知機能の改善に役立つ可能性が報告されており、その機能性成分の一つもβ-ラクトリンと命名されたペプチドです。
その他の機能性
その他、認知機能改善成分としてオレイン酸アミド(オレアミド)やデヒドロエルゴステロールといった成分が同定されています。また、チーズには短鎖脂肪酸、GABA、共役リノール酸、ペプチド以外の抗酸化物質、ラクトフェリンなど様々な機能性物質が含まれています。その他、チーズ中には沢山の乳酸菌が含まれており、乳酸菌による様々な機能性が期待できます。
このようにチーズには沢山の機能性があり、また種類も味も様々です。是非、色々試してお気に入りのチーズを探してみてください。
【参考文献】
・チーズを科学する、チーズプロフェッショナル協会、幸書房
・チーズの科学、齋藤忠夫、講談社
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