センセイ、前回の話、面白かったので続きを聞かせてください。続きが気になっちゃって
興味を持ってくれてありがとう!では早速行ってみましょう!
(いけいけ〜、もっとぼくを出せ〜)
前回のおさらい
東日本大震災をキッカケに色々考えて、「トリプルプロテクト〜!」という謎の魔法を唱えたキノピー先生であった(ぜんぜん違う笑)。詳しくは下記記事参照
豆乳ヨーグルト登場
放射性核種(セシウムとストロンチウム)をくっつけてくれる菌として選ばれたキノピー菌であったが実際に応用するためには気軽に摂取できるヨーグルトがいいと考え、牛乳に入れて発酵させてみました。ところが何とこの菌、牛乳では発酵しなかったのです(T_T)
乳酸菌は何となくイメージから牛乳をよく発酵させると思われていますが、実際牛乳に入れると発酵しない(もしくは発酵が緩慢な)乳酸菌は沢山います。特に植物由来の乳酸菌(一般的に植物性乳酸菌)は発酵しない菌が多いです。
困った末、考えました。豆乳ならいけるんじゃないかと。当時は今ほど豆乳ヨーグルトはメジャーではありませんでしたが、ちらほら事例はありました。その情報がなかったら途方に暮れていたかもしれません(感謝!)。
ドキドキしながら豆乳に入れてみると、次の日見事に固まっていました。ここから豆乳ヨーグルトの研究がスタートしたのでした。
なぜ抗酸化が必要なのか
①放射性核種を乳酸菌に吸着させ、効率的に対外へ排出する、②抗酸化で細胞のダメージを防ぐ、③免疫賦活化でガン化細胞を排除する、という作戦で内部被曝から保護してくれる乳酸菌を見つけようということになりましたが、そもそも何故抗酸化が必要なのでしょうか?
放射線がDNAに当たるとブチっと切れます。これを放射線の「直接作用」と言いますが、放射線にはもう一つの作用があります。
私たちの身体の6〜7割(赤ちゃんは7〜8割)は水でできています。水分子に放射線が当たると活性酸素が発生します。私たちの身体には活性酸素を除去するメカニズムがありますが、過剰に発生した活性酸素は細胞膜やDNAを傷付けてしまいます。これを放射線の「間接作用」と言います。
つまり、放射線防護効果を期待するなら抗酸化物質を摂れば良いのです。
そこで抗酸化能を調べる試験を行いました。その前に下の参考記事を見ておくと理解が深まるかと思います。
抗酸化試験
まず菌体の抗酸化試験を行いました。すると、HORAC法という方法で測定した場合、なんとキノピー菌が圧倒的に高かったのです(図1参照)。
次に豆乳ヨーグルトの上清(上澄み液)を使って、腸上皮細胞株(HCT116細胞)に対する活性酸素種(ROS)の除去能力を試験してみました。こちらでもキノピー菌で作った豆乳ヨーグルト(キノピーヨーグルト)は高い抗酸化能を示しました(図2参照)。よく分からなくても「同じ乳酸菌でもこんなに違うんだぁ」と思ってくれるだけいいです。
さらに、同じ細胞株を用いて過酸化水素(H2O2)によるDNA損傷の抑制効果を試験しました。すると、キノピーヨーグルトの上清は未発酵のコントロールと比較して高いDNA保護効果が認められました(図3参照)。
この効果は何から来ているのか?豆乳には抗酸化物質がたくさん含まれています。イソフラボン、サポニン、ポリアミン、ビタミンEなどです。
また、発酵に新たな抗酸化物質が生み出される可能性もあります(図4参照)。
このうち、抗酸化ペプチド、菌体外多糖(EPS)、3-インドール乳酸、4-ヒドロキシフェニル乳酸は乳酸菌によって産生されたりされなかったりします。また、アグリコン型イソフラボンやポリアミン量は乳酸菌によって変わってきます。キノピーヨーグルトで明らかにしている抗酸化物質は菌体外多糖(EPS)です。キノピー菌は中性多糖(電荷を持たない多糖)と酸性多糖(負電荷を持つ多糖)を2つ作っています。これらの抗酸化を試験したところ、酸性多糖において抗酸化能が認められました(図5)。この試験ではORAC法(左)とHORAC法(右)の2つで試験しています。
このようにキノピー菌で作ったキノピーヨーグルトは高い抗酸化能を持つことが明らかになりました。
だがこれもキノピー菌のポテンシャルのほんの序章に過ぎなかったのです・・・。
③に続く
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