キノピー菌誕生秘話おもしろいですねぇ
ありがとう。少しずつお話していきますね
その後の展開気になってます
(ぼく凄いでしょ?)
ほんと、こんなに凄いとは思わなかったよ
(エッヘン!もっとほめて)
もっとペディオちゃんのこと知りたいなぁ
(キノピー先生、語ってちょうだい)
ハッ、仰せのままに!今日はイソフラボンについてお話させていただきます
(くるしゅうないぞ)
(わたしのポジションが・・・)
前回までのおさらい
「うぉーーー、トリプルプロテクトじゃーー」、「抗酸化で降参か?」とか訳のわからないことを呟くキノピー先生であった・・・・・(ぜんぜん違う笑)。ということで、下の記事見てね。
イソフラボンって?
「豆乳の成分と言えば?」と聞くと恐らく一番にあがってくるであろう物質がイソフラボンだと思います。
詳しくは別記事で書きますのでここでは簡単にまとめます。
イソフラボンは大きく3つの種類があり、そこに糖がついたりすると名前が変わります。
ダイジン(Daidzin)、グリシチン(Glycitin)、ゲニスチン(Genistin)という配糖体が、アグリコン型になるとダイゼイン(Daidzein)、グリシテイン(Glycitein)、ゲニステイン(Genistein)という名前に変わります。語尾が「-in(イン)」から「-ein(エイン)」っていう感じで名前が変わるのです。
配糖体はさらにマロニル化しているもの、アセチル化しているものなどがあります。
天然型の多くは配糖体です。
イソフラボンのアグリコン化って?
ではそもそもアグリコンって何なんでしょうか?
簡単に言うと配糖体から糖が取れたものをアグリコンといいます。また、糖が取れることをアグリコン化といいます。イソフラボンの場合、くっついている糖はグルコース(ブドウ糖)です。
「イソフラボン」といった場合、アグリコンか配糖体か分からないので、区別するときはアグリコン型イソフラボン(またはイソフラボンアグリコン)とか配糖体型イソフラボン(またはイソフラボン配糖体)とか言ったりします。配糖体のことをグリコシル型と言ったりもします。
ちなみに配糖体とかアグリコンなどの言い方は、イソフラボンだけでなく、色々なものに使います。
とりあえず、糖が外れたものをアグリコンということだけ知っておけばOKです。
アグリコン型イソフラボンの方がいいの?
吸収率が上がる
一般的にアグリコン型イソフラボンの方が吸収性が高くなると言われています。この手の研究は結構されており、100%そうなるわけではないんですが、「吸収率が高くなった」とする研究のほうが多いです。人種や腸内細菌によっても変わってくるのだと思います。
なぜ吸収率が高くなるのかというと、疎水性が増すからです。
「えっ?どうこうこと?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。簡単に説明します。
糖は水によく溶けますよね?水と仲がいいんです。それが外れると疎水性が高くなり、水よりも油と仲が良くなります。細胞膜は油(脂質二重層)ですからそっちのほうが細胞内へ取り込みやすくなるというわけです。
機能性が上がる
また、アグリコン化により機能性が高くなることがあります。抗酸化、抗糖化、抗炎症能などです。こちらについては、また別記事で詳しく書きたいと思います。
キノピーヨーグルトではイソフラボンのアグリコン化はするの?
前置きが長くなりましたが、豆乳ヨーグルトの機能性解析の一環として、キノピー菌で作った豆乳ヨーグルト(キノピーヨーグルト)のイソフラボンのアグリコン化も調べました。
色んな乳酸菌で作った豆乳ヨーグルトを調べたのですが、大きく3つに別れました。
- ほとんどアグリコン化していない
- 中程度アグリコン化している
- 高度にアグリコン化している
キノピーヨーグルトのアグリコン率はどうでしょうか?
答えは2番です!
「え~~~~~、3番じゃないんだぁ」
という声が聞こえてきそうです。
そうなんです。中程度のアグリコン化率なんです。でもご安心ください。ちゃんと働いてくれますから。続きをご覧ください。
どうやって乳酸菌はイソフラボンをアグリコン化しているの?
キノピーヨーグルトのアグリコン化率は中程度でした。そもそも乳酸菌はどうやって配糖体イソフラボンをアグリコン型に変換しているのでしょうか?
答えは簡単です。
糖を切り出す酵素を持っているのです。
その酵素名を「β-グルコシダーゼ」と言います。
イソフラボン配糖体はグルコースがβ-結合でアグリコンに結合しています。これを切り出す酵素がβ-グルコシダーゼです。
乳酸菌はこの酵素を持っている菌株と持っていない菌株がいます。また、その量も異なります。これが答えになります。つまり、β-グルコシダーゼを沢山持っている乳酸菌で発酵させるとイソフラボンのアグリコン化が起こります。実際に我々の研究室で相関性を解析すると、綺麗な正の相関が見られています。
中程度のアグリコン型率でもいい!?
キノピーヨーグルトのアグリコン率は中程度でしたが、それでは駄目なのでしょうか?
豆乳を発酵させるとβ-グルコシダーゼで配糖体イソフラボンから糖が外れ、アグリコン型イソフラボンなるとお話しましたが、ではそもそも乳酸菌は何故β-グルコシダーゼで糖を切り出すのでしょうか?
腸内細菌を含む生物はグルコースからエネルギーを得ています。使い勝手がいいんです。当然、乳酸菌は配糖体イソフラボンからグルコースをゲットして食べてエネルギー源にしていると考えられます。
通常、大豆や豆乳などを摂ると配糖体イソフラボンは腸内細菌によりアグリコン型イソフラボンに変換されます。逆の見方をすると配糖体イソフラボンは腸内細菌にグルコースを提供しているということになります。ちなみに腸上皮細胞にもβ-グルコシダーゼがあり、細菌がいなくてもある程度分解・吸収されます。
つまり、アグリコン型イソフラボンの方が生体利用率は高いんですが、中程度のアグリコン化率でもあとは腸内細菌がアグリコン化してくれるというわけです。逆に腸内細菌の餌になることにより、体に良い作用が得られる可能性もあります。
β-グルコシダーゼを持つ腸内細菌として、乳酸菌、ビフィズス菌、バクテロイデスのほか、大腸菌、クロストリジウム、ユウバクテリウムなど様々な菌が持っているため、有用菌だけ増えるかどうかは疑問がありますが腸内細菌への影響はありそうです。実際に未発酵の豆乳と豆乳ヨーグルトをマウスに投与すると菌叢が変わりますし、豆乳ヨーグルトでも使う乳酸菌の種類を変えると菌叢も変わってきます。複合要因があるので何が変えているのはなかなか特定はできないですが、発酵食品の多様性恐るべしと言ったところです。
④につづく
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