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乳酸菌とは?

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キノピー先生
大学准教授 兼 ベンチャーCEO
20年以上、乳酸菌の研究に従事。現役の大学教員。大学の研究成果を社会に還元するために2021年に大学発ベンチャー企業である合同会社プロバイオを設立。最高経営責任者(CEO)を務める(兼業)。

専門分野:乳酸菌や発酵食品の機能性
きんこちゃん

キノピー先生、今日の菌活大学の講義はなんですか?

キノピー先生

私、乳酸菌の専門家なので乳酸菌にしようかと思ってるよ

きんこちゃん

乳酸菌ってよく聞くけど、実はよくわからないです・・・

キノピー先生

そんな人多いよ。何かよくわからないけど、身体にいいから摂ろうって思っている人が大半なんじゃないかな

きんこちゃん

私もそのパターンです・・・

きんこちゃん

センセイ、素人にもわかるように基礎から教えてください!

キノピー先生

了解!それじゃ早速、乳酸菌についての講義を始めていきます。今日は乳酸菌の定義についてお話します

目次

乳酸菌ってどんな菌?

乳酸菌は広義と狭義の2つの意味で使われることが多いです。

広義の乳酸菌は乳酸をたくさん作る菌です。単純ですね。

狭義の乳酸菌には色々と定義があります。細かいところは覚える必要はありませんが、ざっと下記のとおりです。

  • ①グラム陽性
  • ②桿菌または球菌
  • ③カタラーゼ陰性
  • ④消費したブドウ糖に対し、50%以上の乳酸を産生する
  • ⑤内性胞子を形成しない
  • ⑥運動性がない

①グラム染色とは?

デンマークの学者、ハンス・グラムによって考え出された細菌類の染色法です。この染色によって紫色に染まる菌をグラム陽性菌、染まらない菌をグラム陰性菌といいます。グラム陰性菌は、観察しやすいようにその後、赤く染めます。これを対比染色といいます。

染色性の違いは、細胞壁の構造の違いによるものです。グラム陽性菌は、ペプチドグリカン(ペプチドと糖で構成される高分子の物質)層が厚く、脂質が少ない細胞壁を持ち、グラム陰性菌は、ペプチドグリカン層が薄く、脂質が多い細胞壁を持つのが特徴です。

乳酸菌はグラム陽性菌になります。

代表例

  • グラム陽性菌:乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌、ブドウ球菌、リステリア菌、腸球菌、ボツリヌス菌など
  • グラム陰性菌:大腸菌、サルモネラ菌、ピロリ菌、レジオネラ菌、酢酸菌、緑膿菌、エンテロバクターなど
乳酸菌の顕微鏡写真(青く染まっているのがグラム陽性菌の乳酸菌)

乳酸菌の形は?

乳酸菌の形は丸い球菌と棒状の桿菌(かんきん)のどちらかです。球菌は一列に連なった連鎖球菌や4つが一塊になった四連球菌など色々あります。また、桿菌は上の図のような形をしていますが、非常に長い長桿菌、短い短桿菌まで様々です。短桿菌は一見すると球菌のように見えたりもします。また、同じ菌でも培養条件によっても長さが変わってきます。

カタラーゼとは?

カタラーゼは過酸化水素(H2O2)を水と酸素に分解する酵素です。

2H2O2→2H2O+O2

上記の化学式では過酸化水素(H2O2)が水(H2O)と酸素(O2)に分解されているのが分かります。これを行う酵素がカタラーゼです。過酸化水素は鉄などと反応すると、ヒドロキシラジカルという活性酸素種(ROS)が生成されますフェントン反応といいます)。このヒドロキシラジカルは強力なラジカルで様々なものを酸化させてしまいます。微生物もヒドロキシラジカルでやられてしまうので、それを打ち消す酵素としてカタラーゼを利用している菌も多くいます。

乳酸菌はこのカタラーゼを持っていません。従って、酸素があるところがあまり得意ではありません。酸素があっても生きていける通性嫌気性菌ですが、通性嫌気性菌の中でもより嫌気よりの菌です。

実は上の化学反応は身近なところで見ることができます。私達が怪我をしたときに、傷口にオキシドールをかけますね。そのときに、傷口から泡が発生するのを見たことありませんか。実は、それは酸素です。オキシドールは薄い過酸化水素水です。これをかけて殺菌しているのですが、そのときに私達の身体にあるカタラーゼがオキシドールを分解して酸素が発生しています。

ちなみに、このカタラーゼという酵素ですが、酵素の中でも代謝回転数が非常に高いことが知られています。1秒間に何回ぐらい上記の反応を触媒すると思いますか?

条件が揃えばですが、なんと1秒間に驚きの4000万回転です。そのぐらい速やかに過酸化水素を分解する必要があるということです。

とにかく乳酸をたくさん作る

下の図のように乳酸菌には大きく2つの発酵形式があります。ホモ型発酵とヘテロ型発酵です。ホモ型発酵では1分子のブドウ糖から2分子の乳酸ができます。100%乳酸になっている発酵形式です。ヘテロ型発酵では、1分子のブドウ糖から1分子の乳酸、そして1分子のアルコール(エタノール)と1分子の炭酸ガスを作る発酵形式です。これも重量換算で50%の乳酸を作ることが分かります。そのため、この発酵形式も「消費したブドウ糖に対し、50%以上の乳酸を産生する」という定義に当てはまります。

実際には乳酸だけでなく、クエン酸、酢酸、ギ酸、コハク酸など様々な有機酸を作りますが、量は圧倒的に乳酸が多いです。

ちなみに、ヘテロ型発酵ではアルコールと炭酸ガスを作りますので、ヨーグルトなどの製造には不向きです。

内性胞子を形成しない?有胞子性乳酸菌って?

乳酸菌の定義には内生胞子を形成しないというものがあります。菌体内に胞子を作らないということです。ところが、有胞子性乳酸菌という言葉を聞いたことがある人もいると思います。これは広義の意味で使われている乳酸菌です。その正体は、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)という枯草菌(イメージしやすいところでいうと納豆菌が挙げられる)の仲間ですBacillus属は乳酸菌ではありませんが、乳酸をたくさん作るという広義においては乳酸菌の仲間とも言えるかもしれません。いずれにせよ整腸作用など身体によい機能を有している菌です。

乳酸菌の運動性は?

乳酸菌は基本的には運動性がありません。そのため、腸内では粘液層(ムチン層)などにくっつき、増殖することで腸内での定住性を獲得しています。自由に動いて好きなところに行くことができないのです。

しかし、自然界は必ず例外が存在します。乳酸菌の中にもL. agilisという乳酸菌には鞭毛(べんもう)があり、運動性を示すことが報告されています。ですが、基本的には乳酸菌は運動性がないと覚えておいてくださいね。

キノピー先生

名前:キノピー先生(大学の准教授) 専門分野:乳酸菌や発酵食品の機能性 20年以上、乳酸菌の研究に従事。現役の大学教員。大学の研究成果を社会に還元するために2021年に大学発ベンチャー企業である合同会社プロバイオを設立。最高経営責任者(CEO)を務める(兼業)。

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