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ミッション!謎の気持ち悪い物質の正体を追え!

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キノピー先生
大学准教授 兼 ベンチャーCEO
20年以上、乳酸菌の研究に従事。現役の大学教員。大学の研究成果を社会に還元するために2021年に大学発ベンチャー企業である合同会社プロバイオを設立。最高経営責任者(CEO)を務める(兼業)。

専門分野:乳酸菌や発酵食品の機能性
きんこちゃん

センセイ、柿酢を自分で作っていたんですがとんでもないものが現れました〜

キノピー先生

えっ、なになにとんでもないものって?

きんこちゃん

これです!やばいでしょう?

キノピー先生

うわぁ〜〜、これは鳥肌が立つね・・・

きんこちゃん

見慣れたら可愛くなってきたんですが、これなんですか?

キノピー先生

きんこちゃんは、もう立派な菌活ウーマンだね。顕微鏡で覗いてみようか?

きんこちゃん

ぜひぜひ見たいです!

キノピー先生

覚悟して御覧ください

ペディオちゃん

(ぼくの数百倍気持ちが悪い・・・)

目次

事の経緯

無料のオープンチャットである日、ご相談を受けました。自作の柿酢を放置してたら凄いことになっていたと。

これなんですか?と尋ねられ、「産膜酵母か酢酸菌かなぁ」とお答えしたんですが、思いの外オープンチャットで盛り上がり、どんな菌か知りたいということになりました。

その情熱に負け、サンプルを大学に送ってもらい顕微鏡観察することになったのでした

オープンチャットについては下の記事参照。

閲覧注意:送られてきた写真

生物顕微鏡で覗いてみよう!

ということで、生物顕微鏡で覗いてみました。

倍率は1,000倍です(接眼レンズ10☓対物レンズ100)。

1,000倍は油浸レンズという特殊なレンズを使うので一般ではなかなか見ることができない倍率だと思います。

使った顕微鏡

こんなやつです。

生物顕微鏡

届いたサンプルを開けてニオイを嗅いでみた

思いっきってニオイを嗅いでみた。

意外と臭くない!

どこかで嗅いだことあるような・・・イカの塩辛???

ちょっとわからないですがそれほど臭くはなかったです(職業柄、臭いニオイの菌を色々嗅いできたから感覚がおかしくなっているのかもしれませんが)。

グラム染色してみた

グラム染色をしてみました。

グラム染色については下の記事を御覧ください。

STEP
サンプル塗布と火炎固定

固定化は本来ガスバーナーでやるんですが、今回はコンロでやりました。

ガスコンロで軽く水気を飛ばして固定化

これ何のためにやるかというと、菌をスライドグラスに固定化するためです。

車の窓に付いた雨水の痕を思い出してください。あれって上から水をかけたぐらいでは落ちませんよね。菌を染色するときは、液体を添加したり、水道水で洗浄したりするので固定化していないと菌が流されていなくなってしまします。そのための火炎固定です。やり方は色々ありますが割愛します。

STEP
染色液A(ビクトリアブルー)での染色

写真のような青い液体です。グラム染色にはクリスタルバイオレットがよく使われますが、当研究室ではビクトリアブルーを使っています。染まったときの色が少し違うだけで特に違いはありません(好みです)。

ビクトリアブルー

それをピペッターを使って菌を塗り拡げたところに添加してきます。

白いのが菌を塗ったところ
一分待って染色
STEP
洗浄(ピクリン酸アルコール)

次に水道水を少量だしながらスライドグラスの裏側からビクトリアブルーを洗い流します。

裏側に添加して回り込んでくる水で洗浄(直接かけると菌が剥がれるので)
水洗後

次にピクリン酸アルコールを使って余分な染色液を落としていきます。

グラム陽性菌はペプチドグリカン層が厚く、ペプチドグリカン層に染み込んだ染色液は脱色されませんが、グラム陰性菌は外膜が厚くペプチドグリカン層が薄いので外膜部分にある染色液はこの作業で洗い流されます。

ピクリン酸アルコール
青い染色液が溶け出してきます
洗浄後(結構青い)
STEP
染色液B(フクシン)での対比染色

次に余分な水気を優しく取り除いた後、染色液B(フクシン)を添加して一分待ちます。フクシンよりもサフラニンを使う人の方が多いかもしれません。ちょっと色が違います。これも好みです。

グラム陽性菌はすでに染色液Aで既に染色されているため、それ以上染まりませんが、グラム陰性菌はこれで赤色に染まります。染色してないと見づらいのでこのような作業をします。これを対比染色と呼びます。

フクシン
一分待ちます

一分待ったら、水洗して水気を優しくとったら染色完了です。

最終的にこんな感じに(染めムラがあるな・・・)
STEP
顕微鏡観察

ということで、顕微鏡で観察してみました。

今回は上のカメラではなくて、接眼レンズからスマホで撮るという学生がよくやっている技を使って撮りました。

スライドグラスをセットして油浸オイルを滴下
観察を始めよう!なんか見えてきたぞ!
おおぉー
見えたーーー!

色々撮ってみた。ギャラリーをお楽しみください(クリックすると拡大されます)。

結論

まず、大きさから言ってこれは細菌ではありません。酵母の仲間と思われます。細菌はこんなに大きくないからです。

参考までに乳酸菌の写真を載せます。基準となるものがないので分かりづらいかと思いますが。。。

プランタラム菌(乳酸菌)

今までグラム染色について解説してきましたが、グラム染色は細菌用の染色法です。酵母には使いません。なのでグラム陽性・陰性は今回関係なく、形と大きさだけでの判断となります

前述の通り大きさは酵母です。細菌ではありません。ですので柿酢に生育した菌は、酢酸菌ではないことが分かります(酢酸菌はグラム陰性桿菌です)。膜を張っているので産膜酵母だと思います。

ということで、今回の「ブツ」の正体は産膜酵母だと思われますが、産膜酵母って色々いるんですよね。形態的にPichia(ピキア)、もしくは、Candida(カンジダ)でしょうか?酵母も色々いるので分かりませんが。

小さな丸は胞子でしょうか?(赤く染まったものがあるのはそのため?)、長いのは偽菌糸(仮性菌糸)でしょうか?

私は酵母は専門外なので専門家のコメントお待ちしております

今回は柿酢に生育した謎のブツの正体を追うというミッションでしたが、いかがだったでしょうか?形態だけではこれ以上の判断は難しいかなと思います(その他の性質を調べたり、DNA配列を読む必要あり)。でも結構時間かけて頑張りましたので許してくださいm(_ _)m。

少しでもワクワク感を味わっていただけたなら幸いです。感想等、コメント欄にお待ちしております。

キノピー先生

名前:キノピー先生(大学の准教授) 専門分野:乳酸菌や発酵食品の機能性 20年以上、乳酸菌の研究に従事。現役の大学教員。大学の研究成果を社会に還元するために2021年に大学発ベンチャー企業である合同会社プロバイオを設立。最高経営責任者(CEO)を務める(兼業)。

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